真実(まこと)の愛
「……麻琴ちゃん、そのヘアスタイルとカラー、すっごく似合ってる」
麻琴はグレージュの柔らかなウェーブのロングヘアを肩の辺りまでバッサリ切って、グレージュブラウンに染め直していた。
「あら、ほんと?ややちゃん、ありがとう」
これからは「管理職」の端くれとして、取引先とのつき合いもしなければならなくなるため、落ち着いた雰囲気に見せた方が得策のような気がしたから、イメチェンしたのだ。
「麻琴ちゃんの新しい部署はどう?」
とたんに、麻琴の顔が険しくなる。
「……なんか、あるみたいねぇ」
稍が右手で頬杖をついて、くすくす笑う。
淡水パールのピンキーリングがやわらかな光沢を放つ。真珠は彼女の誕生石だ。
「そうなのよ……でも、ここではねぇ」
社食では、だれが聞き耳を立てているか知れやしない。