真実(まこと)の愛
Chapter2
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首都高速台場線のインターを降りてすぐにある海外でも有名な系列のホテルに、そのショットバー「Viscum」は入っていた。
会社があるテレコムセンターからでも、タクシーで十分もかからない。
一見の客がふらっと訪れるには敷居の高い、いかにも「オトナの宿り木」という落ち着いた雰囲気を醸し出すそのバーに、麻琴はなんの躊躇いもなく入っていく。
以前からここには、なにも考えずにただ一人で呑みたいときに訪れていた。
麻琴がいつものようにカウンターのハイスツールに腰を下ろすと、艶やかな黒髪をオールバックにし左耳にダイヤのピアスを輝かせたバーテンダーがおしぼりを持ってきた。
「いらっしゃいませ、渡辺さま」
背筋をすっ、と伸ばしてやたらと姿勢がいい彼は、まだ二十代の半ばであるにもかかわらず、すでにバーテンダーの世界大会で優勝している若手の有望株だ。
胸のネームプレートには「杉山」とある。
オーナーである祖父からこの店のマスターを任されていた。
「とりあえずビールでよろしいですか?」
杉山がコースターをセットしながら尋ねる。
「そうね……杉山くん、ホワイトエールはあるかしら?」
「ヒューガルデン・ホワイトでしたらございますが」
ベルギービールの中でもコリアンダーとオレンジピールの風味のするホワイトビールだ。
「……じゃあ、それをお願い」