真実(まこと)の愛
「……で、ロハスでの君のチームなんだが」
と口火を切った魚住だが、彼も今日付で役職が変わった。
ステーショナリーのPB事業部の部長に昇進したのだ。いくら新興の会社とはいえ、まだ三十代半ばでの部長就任は異例の出世である。
早速彼は、それまでのMD課のメンバーが使う「大部屋」から、今回新たに設けられた部長の執務室である「個室」に移っていた。
そして今、麻琴はその魚住新部長の執務室で辞令を受け取ったところだ。
「わたし、ロハスでは右も左もわからないんですけど」
麻琴は肩を竦めた。
「心配する必要はないさ。それはロハス側もわかってるから、強力な『補佐』が付いたよ。
とりあえず彼がチーム編成してくれた体制でスタートし、徐々に君の色を出していけばいいとのことだ」
魚住部長はクールでシャープな表情を緩めた。
とたんに、少年のような顔になる。
……二十代だったあのころの麻琴が、夢中になった笑顔だった。