真実(まこと)の愛
今までの麻琴は、このバーに来てもほとんどだれとも会話をせず、一人で淡々と呑んでいた。
このような場所に一人で来るようなオンナなら簡単に別のフロアの客室に連れ込める、と男たちから思われたくなかったからだ。
だけど、松波と一緒に呑むようになって、もう変な心配もせずに、大好きなお酒を心ゆくまで楽しめるようになった。
しかも同じウィスキー好きな彼となら、いろんな銘柄の話もできて、
『なんだか呑みたくなってきたな……ちょっと試してみようか?』『いいですね!』
なんて言って、ノリでテイスティングしてみるのもしょっちゅうだった。
……魚住さんは、一緒に呑みに行った居酒屋では「神の河」派だったな。
青山さんが部屋に来てた頃は、彼のために張り切ってカッコつけて、あまり知りもしないワインをあれこれ用意してたっけ。
(でも、実は彼が「スーパードライ」派だったということを、ついこの前、妻になった稍から知らされたのだが……)