真実(まこと)の愛
「……見事に、煮詰まってるなぁ」
麻琴のautoCADを覗き込んで、守永が唸った。
……課長、近いったら!セクハラよっ!
麻琴はデスクチェアのキャスターを体重移動によって横へ転がして、身体をずらす。
「一発目は渡辺さんのプランで行く、って決定事項だったですよね?」
遠くから上林の声が飛んできた。
「だったら、せめてコンセプトくらい出してもらわないと、こっちも動きようがないんっすけどね」
「ちょ、ちょっと、上林さん……」
紗英があわてて止めようとする。
「なんだよ、岡本。君だって、商品のコンセプトすらないのに、販促のプランなんか練れないだろ?」
確かに「正論」なので、麻琴はぐうの音も出ない。
「まぁまぁ、落ち着け、上林。
まだ、このMD課自体が発足したばかりで、どのチームも手探り状態なんだ。プレゼン会議までまだ時間もあるし、そう焦る必要はないぞ」
守永がそう言うと、上林もしぶしぶ矛を収めた。
……ううっ、やりづらい。
これでは、だれがチームリーダーかわからないわ。
そもそも、守永はサブリーダーの前に「課長」であった。やはり、経験に裏打ちされた「貫禄」が違う。
……それでも、このチームのリーダーは自分だ。