真実(まこと)の愛
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「……じゃあ、麻琴ちゃんのチームリーダー昇進と、ちょっぴり早いけど、麻琴ちゃんの誕生日を祝して、かんぱーいっ!」
土曜日の夜、古民家をそのまま移築したという居酒屋の個室で、青山 稍は生中のビールジョッキを高々と掲げた。この店の生ビールはサントリーのプレミアムモルツだ。
「ややちゃん、美咲さん、ありがとう!
プレゼントまでもらっちゃって。
……大事に使わせていただきます」
麻琴は自分のプレモルのジョッキを稍に合わせたあと、魚住 美咲の持つ冷酒のグラスにも合わせた。
ビールが苦手で日本酒の好きな美咲は、自身の故郷の微発泡酒、風の森をオーダーした。
日本各地の名酒が揃うこの店を見つけたのは、美咲だった。早速、個室を予約してくれたのだ。
麻琴が二人からプレゼントされたのは、仕事用に会社から配布されているタブレットのケースだった。
クリムゾンレッドに染められた鞣し革のケースはオーダーメイドで、世界に一つしかない。ハンドホルダーとポケットが付いていて、使い勝手もよさそうだ。
「きっと、麻琴ちゃんが取引先や会議とかでタブレットを取り出したときに『カッコいい女上司』に見られるよー」
稍はそう言ってにっこり微笑んだ。
「あ、お鍋がいい感じで煮えてきたよー」
美咲が土鍋の蓋を開けると、もわぁーっとした煙の中から、白濁した豆乳スープがぐつぐつ煮えているのが見えた。
異常気象が叫ばれる昨今、ついこの前ようやく残暑が去り、はっきり言ってまだまだ「鍋の季節」にしては早過ぎるくらいなのだが。
……「女子会限定コラーゲンたっぷりヘルシー美肌鍋」なら真夏でもOK、年中無休だ。