真実(まこと)の愛
「美咲さん、今日は大和くんを魚住さんに任せてきたの?」
麻琴が鍋の中の白菜を箸で取りながら尋ねる。
白菜には、メラニン色素の生成を抑えて美白になるための必須アイテム「ビタミンC」がレタスの約四倍もあるという。また、食物繊維も豊富な上にカリウムも含まれるから、むくみ解消にもつながる。なのに、ほとんどが水分なので、低カロリーである。さらに、コラーゲンとの相性が良く「相乗効果」も見込めるのだ。
「そうだよー。押しつけてきちゃった」
美咲は、はっきり言って苦手なニンジンを「できれば食べたくないなぁ」と思いながら箸でつまむ。
にんじんは肌の新陳代謝を促して美肌をつくる「ビタミンA」の宝庫であるが、甲状腺に持病を抱える美咲にとっては、免疫力を向上させるためでもある。逆に、ヨウ素を多く含むわかめや昆布などの海藻類はほどほどにしなくてはいけない。
すべては、一人息子の大和のためだ。
持病によって不妊・流産しやすい体質を乗り越えて授かった。美咲の息子であるということは魚住部長の子どもでもあるのだが、大和はもうすぐ四歳になる。
「でも、今日はね、和哉だけじゃなくて智史くんも面倒みてくれてるの」
……ええっ、あの青山部長がっ⁉︎
「どういうわけか、大和くんが智くんに懐いてるんだよねー。子ども相手でも関係なくあんな感じで、容赦ないのにさ」
稍がそう言って首を傾げた。
そして、いきいきとしてハリのある美肌をつくるための「たんぱく質」をたっぷり含んだ豆腐をすくってとんすいに入れ、その上に豆乳のお出汁をたっぷりとかける。身体中の細胞を形成しているたんぱく質は、英語では「protein」である。
稍だけでなく麻琴も美咲も、「人工」的につくられたホエイや錠剤のサプリメントで摂取するよりも、「天然」の食材で摂った方がずっといいと思っている。