クリスマス・イルミネーション
12月7日

その日は、和希から誘ってご飯を食べる事にした、夕方、横浜駅で待ち合わせた。

「何処行く?」
「居酒屋行きたい」

言われて、和希は内心青ざめる。

(俺、未成年なんですけどね)
「飲みたい気分なの。え? 嫌? 駄目ならラーメンがいい」

笑顔で言われ、和希は少しムッとした。

「今日こそ、さっさと帰る気だろう?」
「あ、バレた?」

ニコッと笑う愛由美に、軽くデコピンを食らわせる。

「付き合ってやるよ」





和希の当然注文はウーロン茶だ。

「やっぱり晴真は気分じゃなかった?」
「まあな」
(さすがに教師の前で堂々と呑む気には)

愛由美は勝手にビールジョッキで乾杯をし、一気に半分ほど飲み干す。

「おいしいっ」
「意外だな、弱そうなのに」
「強くはないよ、好きだけど」

お通しに出て来た枝豆を摘みながら言う、確かにもう頬にほんのりと赤みが差している。

「愛由美だと補導されてそう」

和希がからかって言うと、愛由美は溜息を吐く。

「本当よ、20代前半の時は、呑んだ帰りはよく職務質問されてたよ」
「マジか」
「尋子は若く見えてるんだからいいじゃーんとか言うけどさ。一緒に居て職質受けてても助けてくれないし。そこまで来ると問題あるような気がする」

言いながらジョッキを空け、次のビールを頼んでいた。
和希はくすりと笑う。

「じゃあ、俺と連れ合い取れて良いかもよ」

そう言って手を伸ばし、愛由美の髪を一房取って指に絡めた。
愛由美は枝豆を咥えたまま固まる。

「8歳差も周りは気にしないんじゃない? 愛由美も少しはその気になったら?」
「どんな気?」

髪を取り返し、枝豆の皮をお皿に放り込みながら言う。

「ったくー。俺、口説いてるんだぜ? そろそろ色気出せよ」
「ないないー」

言いながら、二杯目のビールに口を付ける。

「愛由美」

また枝豆に伸ばされた愛由美の手を掴む。

「ちゃんと俺を見ろよ」

愛由美は素直に『晴真』こと和希を見た。

度は弱いらしい眼鏡越しの目と合う、見れば見る程和希に似ている。

(そんなはず……)

見つけたホクロを思い出し、急に顔が熱くなった。

「俺、本気だぞ。こんな風に中途半端じゃなくて、ちゃんと愛由美と逢いたい」
「は、半端って……?」
「尋子さんの代わりみたいんじゃなくて、ちゃんと俺として逢ってくれ」
「代わりになんか……」

してるかも、と思い直す。

「……」
「こら。はぐらかすな」

またデコピンされる。

「……と、トイレ……」

愛由美は気分を変えたくて、と言うより誤魔化す為に、ふらふらと立ち上がる。

「もう酔った?」

和希は心配して声をかけるが、愛由美は「平気」と言って歩いていく。確かに歩みはしっかりしているようだった。
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