クリスマス・イルミネーション
*
元町の商店街を、ぴったりと身体を寄せ二人は歩く。
大きな目的がある訳ではない、先日のクリスマスプレゼントを交換すると言う企画を遂行する為の買い物だった。
目に付いた店には入っていく。
「もう、本当になんにもいらないの?」
キタムラの店内で物色しながら言う愛由美。
「いらないよ、愛由美がいれば」
愛由美が「これは?」と差し出したキーホルダーを断りながら、和希はさらりと言った。
和希の言葉に、店員があからさまに二人の顔を見比べるものだから、愛由美は恥ずかしくなって慌てて店を出る。
「そもそも、俺が何か上げるって言ってるんだから」
「そりゃそうなんだけど、この間見てたみたいな高価なものじゃ……あ、じゃあ、あそこでもいいけど」
指差したのは、ヨシダと言う玩具なども扱う雑貨店だ。
和希は微笑んだ。
「愛由美なら、飴が付いた指輪とか?」
「もう! まるっきり子供扱いじゃん! 極端じゃない!?」
怒った顔が、また可愛いなあ、などと和希は思う。
更に服飾店などに入るが、和希が欲しいものなどない。
和希が誘って、スタージュエリーと言う宝飾店に入る。
「えー……」
ショーケースの中の値段を見て、愛由美は引く。
(そもそもこんなとこ、婚約指輪とか買いに来るようなとこじゃ)
「これ可愛い」
和希が指差した指輪を見る、5に0が4個付くような値段だ。
「いやいや」
愛由美は難色を示す。
「指輪だと学校にはつけられないか? ずっとつけてて欲しいから、ネックレスとか? 学校でもつけられるように小振りな方がいいよな」
「もう、なんで買う気満々なの」
「いいじゃん」
なんとなく、独占欲を満たすからだ。それがどんな物でも、それを身に付け皆の前に立つ愛由美を想像しただけでワクワクした。
「愛由美、誕生石は?」
「ん……オパール……」
ショーケースに食い入りながら、愛由美は答える。
それを聞いた店員が、トレーにオパールのトップが付いたネックレスをいくつか持ってきた。
「これは?」
和希がゴールドのネックレスを示す。
「どうぞお試し下さい」
店員がご丁寧に鏡を持って来た。
和希が愛由美のマフラーを解き、ネックレスの金具を外して愛由美の首に回す。
「髪、よけて」
耳元で言われ、愛由美は大人しく従う。
向かい合わせのまま、息がかかるほど近くで和希はネックレスを着けた。
二人揃って鏡を見て、その様子を確かめる。
「これも可愛いけど、やっぱこっちかな」
それを外し、今度はピンクゴールドのネックレスに変えた。
今度は背後からそれをつけながら、和希は耳元で囁く
「愛由美、知ってる?」
二人は鏡越しに目を合わせた。
「指輪とかネックレスとかプレゼントするのって、相手を束縛したいって意味があるんだよ」
「え……っ」
「うん」和希は声の調子を戻して言った「やっぱり愛由美は童顔だから、ピンクの方が似合う」
「一言、余計だし……」
「これ、ください」
「えっ、でも、本当に……!」
「いいんだよ」
和希は満面に優しい笑みを浮かべた。
「10月が誕生日だったなら、それも合わせて。なんなら向こう何年かの誕生日とクリスマスとホワイトデーも混ぜる?」
畳み掛けるように言われ、愛由美は顔を赤くして俯き、口の中でモゴモゴと「ありがとう」と答えた。
店員が着けていかれますか?とかなんとか、和希と会話しているのをぼんやり見ていた。
(向こう何年か……)
意味は判る、この先の未来も一緒にいるのかと思うと、ときめいた。
(ネックレスは束縛の……)
その意味を考えると、顔が火照り出す。
(……10月が誕生日)
その言葉を思い出した時、急に腹が立った。
元町の商店街を、ぴったりと身体を寄せ二人は歩く。
大きな目的がある訳ではない、先日のクリスマスプレゼントを交換すると言う企画を遂行する為の買い物だった。
目に付いた店には入っていく。
「もう、本当になんにもいらないの?」
キタムラの店内で物色しながら言う愛由美。
「いらないよ、愛由美がいれば」
愛由美が「これは?」と差し出したキーホルダーを断りながら、和希はさらりと言った。
和希の言葉に、店員があからさまに二人の顔を見比べるものだから、愛由美は恥ずかしくなって慌てて店を出る。
「そもそも、俺が何か上げるって言ってるんだから」
「そりゃそうなんだけど、この間見てたみたいな高価なものじゃ……あ、じゃあ、あそこでもいいけど」
指差したのは、ヨシダと言う玩具なども扱う雑貨店だ。
和希は微笑んだ。
「愛由美なら、飴が付いた指輪とか?」
「もう! まるっきり子供扱いじゃん! 極端じゃない!?」
怒った顔が、また可愛いなあ、などと和希は思う。
更に服飾店などに入るが、和希が欲しいものなどない。
和希が誘って、スタージュエリーと言う宝飾店に入る。
「えー……」
ショーケースの中の値段を見て、愛由美は引く。
(そもそもこんなとこ、婚約指輪とか買いに来るようなとこじゃ)
「これ可愛い」
和希が指差した指輪を見る、5に0が4個付くような値段だ。
「いやいや」
愛由美は難色を示す。
「指輪だと学校にはつけられないか? ずっとつけてて欲しいから、ネックレスとか? 学校でもつけられるように小振りな方がいいよな」
「もう、なんで買う気満々なの」
「いいじゃん」
なんとなく、独占欲を満たすからだ。それがどんな物でも、それを身に付け皆の前に立つ愛由美を想像しただけでワクワクした。
「愛由美、誕生石は?」
「ん……オパール……」
ショーケースに食い入りながら、愛由美は答える。
それを聞いた店員が、トレーにオパールのトップが付いたネックレスをいくつか持ってきた。
「これは?」
和希がゴールドのネックレスを示す。
「どうぞお試し下さい」
店員がご丁寧に鏡を持って来た。
和希が愛由美のマフラーを解き、ネックレスの金具を外して愛由美の首に回す。
「髪、よけて」
耳元で言われ、愛由美は大人しく従う。
向かい合わせのまま、息がかかるほど近くで和希はネックレスを着けた。
二人揃って鏡を見て、その様子を確かめる。
「これも可愛いけど、やっぱこっちかな」
それを外し、今度はピンクゴールドのネックレスに変えた。
今度は背後からそれをつけながら、和希は耳元で囁く
「愛由美、知ってる?」
二人は鏡越しに目を合わせた。
「指輪とかネックレスとかプレゼントするのって、相手を束縛したいって意味があるんだよ」
「え……っ」
「うん」和希は声の調子を戻して言った「やっぱり愛由美は童顔だから、ピンクの方が似合う」
「一言、余計だし……」
「これ、ください」
「えっ、でも、本当に……!」
「いいんだよ」
和希は満面に優しい笑みを浮かべた。
「10月が誕生日だったなら、それも合わせて。なんなら向こう何年かの誕生日とクリスマスとホワイトデーも混ぜる?」
畳み掛けるように言われ、愛由美は顔を赤くして俯き、口の中でモゴモゴと「ありがとう」と答えた。
店員が着けていかれますか?とかなんとか、和希と会話しているのをぼんやり見ていた。
(向こう何年か……)
意味は判る、この先の未来も一緒にいるのかと思うと、ときめいた。
(ネックレスは束縛の……)
その意味を考えると、顔が火照り出す。
(……10月が誕生日)
その言葉を思い出した時、急に腹が立った。