クリスマス・イルミネーション
「……最後に」
和希が小さな声で言うのに、愛由美は耳を傾ける。
「キス、してもいいか」
和希からしたらじれったい程の時間が流れてから、愛由美は小さく頷いた。
床に手をついて身を乗り出す和希を前に、愛由美は顔を上げ目を閉じて待った。
和希の指が、そっと愛由美の頬を撫でる。
和希の指が震えているのが判った、自分の唇が震えるのも判った。
体が近付く感覚に息を止めた。
顔が近付く気配に体を硬くする。
(好きになったのは私の方だ、もっと触れたいのも、キスしたいのも……っ)
唇は啄ばむように触れて、離れて、終わり、と思ったのは愛由美だけだった。
和希は愛由美の肩を抱き寄せ、更に深いキスをした。
「や……っ!」
慌てて和希の体を押し離そうする、その左手を和希の右手に絡め取られた。
和希の左手は愛由美のうなじの髪を掴み、引いて無理矢理上を向かせる。
唇が音を立てて離れ、再び塞ぐ。口腔を舐め取られ、愛由美の唇の端から小さな声が漏れた。
和希は左手をそのままに体重をかけ、愛由美を押し倒す。
「ん! んんー……っ」
唇を塞がれたまま愛由美は抵抗の声を上げた。
和希の脚が愛由美の脚を割って入り、体を固定する。
「駄目……っ!」
唇が離れた隙に声を上げる。
「キスだけって……!」
「前言撤回」
「え……っ」
「最後になんてできない」
和希は愛由美の目の前で、意地の悪い笑みを浮かべた。愛由美は戦慄する。
「や……っ」
「我慢できなくなった」
「嘘でしょ……!」
「本当」
「やめて……っ!」
「俺を好きだって言ったらやめてやる」
「無理!」
「じゃあ、やめない」
愛由美の首筋に顔を埋める。
「武藤くん!」
愛由美の声が虚しく響く。
和希は慣れた手付きで愛由美のツイードのワンピースの背面のファスナーを引き下ろした。
「やめ……っ」
愛由美は身をよじって抵抗するが、その体の動きに合わせて、和希はワンピースを脱がせる。
オフホワイトのキャミソールに包まれた肢体が現れた。
「武藤、くん……っ」
愛由美は目に涙を浮かべて懇願する。
「和希って呼べよ」
和希は口元に笑みを浮かべて言う。
「やだ……っ」
「知ってる」
笑みは冷笑に変わった。
「ますます、征服欲を掻き立てられる」
笑いながら鞄からコンドームを出し、愛由美の脇に放り出す。
「な、んでこんなもの……っ」
初めからそのつもりだったのか、愛由美は青ざめた。
「高校生の必需品だろ」
言いながら愛由美のタイツに手を掛ける。
「やだ……っ! 嫌! やめて!」
本格的な抵抗を受けて、和希は本気の力で愛由美の右の手首を床に押さえつける。
その力に愛由美は恐怖を覚えた。
「……小さい体だな」
和希は呟いた。
(気にしてるのに……っ)
でもそんな抗議をしている場合でない事は判る。
「年齢なんか関係ないって判るだろ。ガキの俺を振り払う事もできないんだから」
愛由美の震える唇に、和希は無理矢理キスをした。