風が少しだけ強く吹くから
カラフル

美術室

薄黄色のカーテンが、激しく落ち着かない様子で揺れている。今日は、風が強い。
その隙間から見えるオレンジと赤の空があまりにも綺麗で、私は目を細める。少しだけ、眩しい。

「………」

ここは、とても静かだ。放課後というのもあるだろうし、美術部員のほとんどがさぼっているというのもあるだろうし、そして何より、ここはあまり人が通らない。誰かが「うちの学校の美術室は霊がでる」という噂を流したらしい。
私は、美術室中を見渡す。こんな所のどこに霊がでるだろうか。それに、ここは空がきれいに見えるし、校庭に植えられた大きな木も見えるし、風通しも良いので、季節を肌で感じられて私は好きだ。
私は、一枚の真っ白な紙を見る。よく見ると、その真っ白な紙の上に、もう一度白い絵の具が塗られていることが分かる。私は、さっきまでずっとその作業をしていた。
白い紙にもう一度、白を足す。それを繰り返すと、始めのつるつるとした紙の感触はなくなり、渇いた絵の具のざらざらだけが私の手のひらに残った。
これを水で濡らしたら、元に戻ってくれるだろうか。私は小さく首を振る。元に戻るより前に、薄っぺらな紙はすぐに破けて消えてしまう。
でも、どうしようもなく期待してしまうのだ。どうにかなるんじゃないかとか、もう少しで振り向いてくれるんじゃないか、とか。


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