風が少しだけ強く吹くから
私の頭の中にはまだ、あの人がいる。一年生のときにたまたま席が隣だったため、よく話すようになった。あの人は、おしゃべりがとても上手だ。私が黙っていてもお構いなしに、ずっと私に話しかけてくる。
それが嬉しくて、好きになった。それだけなのだ。それだけなのに、こんなに長く想っている。今深く考えると、あのとき私は「もしかしたらこの人は私の事が…」と少しだけ期待したせいなのかもしれない。でも、想ううちにそんなことはどうでも良くなってしまった。ただ想う度に、あの人が私のことを意識していないことも分かっていった。
今、あの人とはクラスが離れてしまったし、あれからずっと話していない。
そして、あの人に好きな人がいる、という噂を聞いてしまったのだった。もうどうしようもなくて、私は諦めることもできずに、ずっと想っている。


私は学校の椅子から、ゆっくりと腰を浮かす。そして、途中で汚れても居ない制服のスカートを軽くはらって、美術室の床に立った。
薄汚れたシューズが視界に入る。つま先の緑と足の形を縁取るように囲われた緑も、少しだけ汚れが見える。
私の通っている中学校は、一年生は赤色のシューズ、二年生は緑色、三年生は黄色、という風に学年で色分けされている。私は二年生だから、緑色というわけだ。

もう一度カーテンの隙間から外を見る。空は、やっぱり変わらずオレンジと赤色で私を見ている。明日も、この空だといいなと小さく想った。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop