最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

「ああ、もう! いいから早く、こっち来て!」

 バッと部屋を飛び出して、エヴィエニスの手を握る。
 手を握った瞬間、エヴィエニスが何か言った気がした。
 でも、動転していた私には、その内容を聞き返す余裕がなかった。
 そのまま手を引いて、クローゼットの前で離すと、今度はその広い背をグイグイ押した。
 その間に、2度目のベルが響いた。

「お願いですから、いい子にしていてください。物音一つ立てずに、静かにするんですよ」

 やっとクローゼットに入ったエヴィエニスに、愚図る子供をあやす様に言い聞かせる。

「ヒナタ、まずは説明せよ。何故、我がこのような狭い苦し――」

 はいはい、またあとでね。
 無常にもクローゼットの扉を閉めたことで、会話は強制終了された。


 ピンポーン――。


 3度目のベルが響く。
 私は寝室のドアを閉めて、玄関へと突っ走った。
 玄関でカチャカチャと微かな音がした。
 間違いない。奴が合鍵を鍵穴に刺して回した音だ。
 
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