最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
竜ヶ崎功一郎――。この青年は、私の実弟だ。
24歳の功一郎は、できの悪い私とは違って、文武両道で成績優秀、眉目秀麗のまさに俺TUEEE補正が掛かったラノベ主人公を地でいく秀才。
今でも思い出す。
私の学生時代、特に例のリア充専用イベントの時期は地獄だった。
性格はともかく、イケメンの功一郎は上級生、下級生と幅広い年齢層の女子にモテた。
特に忘れられないのは、高校時代のバレンタインデイだ。
私が功一郎に姉だと何処で聞いたのか、見知らぬ女子達に「功一郎君のお姉さんですよね? これ、彼に渡して」とチョコを託された。
大きな紙袋を最低でも2袋は持っていかないと、持ちきれない量だった。
なんで私に任せるんだよ。本人に直接、告白して渡せばいいじゃん。
さらに、その袋いっぱいのチョコを功一郎に渡せば、中身も差出人も確認せず、可燃ごみ用のゴミ箱に捨てる光景を見せられてみろ。
次の日、学校で「功一郎君にチョコ渡してくれた? 彼はなんて?」と聞かれる身にもなれってんだ!
毎回、目を泳がせながら「お……オイシカッタッテ、イッテマシタヨ」って嘘をつくのは、本当に辛かった。
この恒例行事のせいで、人間不信に拍車が掛かった。
私が喪女になった原因の1つが、この優秀な弟なのだ。