最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
念のため、最後の確認をしてみるも、聞くだけ無駄だった。
その曇りのない答真っ直ぐな答え――、その短さに清々しさすら覚える。
私は、ただ息を呑んで押し黙しかなかった。
エヴィエニスに同情するわけではないが、この現代社会は、ドラゴンも魔法も存在しない。
騎士や冒険者に攻撃され、命を脅かされる心配はないが、これからは『人間』として生きなければならない。
これは、700年以上、ドラゴンとして生きてきたエヴィエニスに『ドラゴンであること』を辞めろと言っているのと同じだ。
私ならこんな選択は、命を脅かされる状況にでもなければ絶対しない。
「こちらの世界に骨を埋める覚悟は出来ている」
エヴィエニスの確固たる決意表明に、意識が引き戻される。
一人で勝手に覚悟されても……。
先ほどから一切表情を変えないエヴィエニス。
ぼっちを好む喪女の私でも、文明レベルも違う、知り合いも同属もいない世界に一人放り出されたら、泣いて暮らす毎日を送るだろう。
そのまま孤独に押しつぶされて、心が壊れてしまうかもしれない。
「そうは言ってもですね。こっちの世界にドラゴンはいないんですよ? 知り合いが誰もいない世界で寂しくないんですか?」
「ヒナタがいる」
澄み切った蒼い瞳が私を――私だけを写していた。
音が消えたような、時間がスローになったような、そんな不思議な錯覚を覚えた。