最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「ヒナタと共に、この世界で生きていくと決めた。ヒナタがいる世界が、我の世界だ」
言い終えると、エヴィエニスは屈託のない笑みを浮かべた。
カッと全身が……特に顔が熱くなった。
顔から火が出そう、とはよく言ったものだ。
ドラマやゲームで聞く台詞でも演技でもない。作意のない正真正銘の告白だ。
好みのタイプでなくても、こんな殺し文句を言われたら、反応に困るし、照れて当然だと自分を必死に擁護する。
そもそも、私自身が『胸キュン』がなんなのか理解していない節がある。
なので、これは胸キュンにはカウントしない。
好きになって、告白したくなったら私の負けで良いだろう。
「な、な、な、なな何言っちゃってるんですか!? 私がその程度の口説き文句でコロッと落ちるとでも思ったんですか? 舐めないでくださいよぉ!!」
「率直な意見を言ったまでだが?」
「へぁッ!?」
奇声を上げて、私は逃げるように席を立った。
一緒に席を立とうとしたエヴィエニスに「飲み物を取りに行くだけですから!」とその場に留まるように怒鳴った。
廊下とキッチンの境、ちょうどエヴィエニスからは見えない位置で壁にもたれ掛かった。
服の胸元をギュッと握って、早鐘を打つ鼓動を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。
あはは、明日の仕事帰りに某『動悸・息切れ・きつけ』に効く漢方薬を買おうかな。
やだ。あの天然垂らしドラゴン、怖い――。