最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「あの年寄り連中とか? そうだな、たまに顔を合わせても、年寄り相手では話が合わん。そもそも宝物にしか興味のない根暗な紅龍皇や、傲慢な金龍帝とは母上が存命の頃から犬猿の仲だ。翡翠妃とは話す機会は多かったが、あれはいつも上の空でな」
おっと、七龍王は不仲だったのか。 提供する話題を間違えたな。
忌々しそうにへの字に口を曲げたエヴィエニス。
若造扱いで、相手にされていなかったのは明白だ。
「え、何それ。すっげぇ会話の内容が気になるんですけどー」
「んん? 聞いても面白くないぞ? なにせ、ジジイ共の昔話と自慢話ばかりだ。やれ、昔は一晩で3つの国を滅ぼしただの。やれ、最近の冒険者は怒鳴っただけで、泣いて逃げ出す腰抜けだの……その様な聞くに堪えない、辻褄の合わん会話が延々と続く」
語る内に嫌な記憶も思い出したのか、エヴィエニスは、わなわなと怒りに身を震わせ、尖った犬歯を剥き出しにする。
私は「あはは」と作り笑いを浮かべながら、出かける準備と言ってリビングから逃走した。
七龍全ては出なかったが、それなりに顔を合わせているものなんだな。
山のように蓄えた金銀財宝の上で眠るのが至福の紅龍皇アロガンツ。
自然をこよなく愛し、それらと調和し、一部となっている翠龍妃リーベ。
そして、ドラゴンの頂点である金龍帝ヴァイスハイト。
そうそうたる面子。『龍殺し』として、いつかは倒したい強敵達だ。
「待てよ? 上手くやれば、エヴィさんから七龍王の弱点を聞きだせるんじゃなかろうか?」
おやおや、参ったね。エヴィエニスの利用価値を見出してしまったよ。
倒したプレイヤーより、もっと詳細な情報を彼は持っているはず。
ん、そんなのは卑怯だって? 勝てば良かろうなのだッ!
情報をもらうだけで、実際に戦うのは私ですし。チートは使わないわけですし、おすし。
3ヶ月間で、どれだけエヴィエニスから七龍王の情報を引き出せるかが、勝負だ。
リアルで話術スキルとか、説得スキルが欲しくなるなぁ。
私の脳裏に七龍王の屍の山の上に立ち高らかに笑う、ソレイユの姿が浮かぶ。
未だ全身未踏とされる最高位の称号「英傑」を私が最初に取得できる。
寝室で一人、私は悪い笑みを浮かべた。