最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~


 これは避けて通れない試練――、そう自分に言い聞かせた。
 数ある夢小説のヒロインは、逆トリップしてきた推しキャラのために、普段使いの服を買いに行くを口実にしたデートイベントを楽しんでいるじゃあないか。
 私の場合、同伴しているのが推しキャラじゃないってだけで……。


 私達がどこにいるのかって?
 今日、達成しなければならない最大のノルマを遂行している。
 つまり、2人で近所の大型ショッピングモールにやって来ているのだ。



「見よ、ヒナタ。店先に並ぶのは、どれも粗末なアイテムばかりだ。これなど、装備したところで何の役に立つのだ?」

 一人で騒いでいるエヴィエニス。
 今、彼が見ているのは、ランジェリーコーナーに陳列されたブラジャー。
 全体的に淡いピンク色で、レースと刺繍、リボンが付いた可愛いヤツだ。
 デザイン的にも、サイズ的にも、私は一生買わないヤツだ。
 さっきから女性客の冷ややかな視線がジャージマンに集中している。


 うん。君は少し、黙っていてくれないかな。
 通過するまで、他人のフリしておこう。

「来たは良いものの。男性の流行ファッションなんて、分からないんだよなぁ」

 男性ものの服がディスプレイされる店舗を覗くが、どれを買えばいいのか見当も付かない。
 ゲーム内の装備だったら、属性やスキルで選べばいいが、現実は違う。
 やっぱり喪女にはハードルが高かったかと頭を抱えていると、いつの間にか、エヴィエニスが店員に捕まっていた。
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