最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「ちょうどいいや。エヴィさん、店員さんにオススメの服とか、似合いそうな服を上下合わせて3、4着選んでもらってください。お会計の時は、このカードを店員さんに渡せばいいですから」
そうだよ、何も私が選ばなくてもいいんだ。
店員の説明と勢いに困惑するエヴィエニスにクレジットカードだけ渡して、私はその場を離れた。
夢小説なら、ヒロインがちょっと目を話した隙に推しが女の子に囲まれて、ちやほやのモテモテ状態になるんだよな。
その光景を見たヒロインが、「そうだよね。彼、カッコいいもんね。私とじゃ不釣合いだよ」とか、推しを呼びに行ったら取り巻きのモブ女に「あんなブスを付き合ってるなんて、可愛そう。きっと騙されてるんだよ」とか嫌味言ってきて、ヒロインが自己嫌悪に陥ったりさ。
店員さんに試着室に押し込まれて、次から次へと服を手渡されてるエヴィエニスを見る限り、そんなイベントは発生しそうに無いけど。
あれは、夢小説をこよなく愛する夢女子が妄想するフィクションであって、これが現実なんだよね。
一時期は夢小説にハマッて、携帯サイトを漁った。
でも、読み手の私は自分をヒロインに投影すると言うよりは、そんなお決まりの展開を楽しんでいた。
いやぁ、懐かしいなぁ。
ボーっと余所見をしていたら、背後から誰かがぶつかって来た。
いや、ぶつかると言うより、突き飛ばされるに近い衝撃だった。
思わず、よろめいて、たたらを踏んだ。
しかし、こんな所に突っ立ていた私が悪いわけだし、謝罪はしないと……。