最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 おい、辞めておいた方がいいぞ。
 こいつ、人の姿はしてるけど、正体はVRMMOの裏ボスだから、その気になればこのショッピングモールを地区ごと地図上から消せるんだぜ。
 ――とは、口が裂けても言えないけど。

「我は、ヒナタの夫になる男だ」

 エヴィエニスは、自慢げに鼻を鳴らした。
 おい、お前もやめろ。その言い方だと、夫婦になるの確定みたいに聞こえるだろ!
 エヴィエニスの態度と言動に青木は、一瞬きょとんとした。

「ふーん、根暗で虐められてたアンタに男。あはは、笑っちゃう。どうせ、お金で」

「貴様は顔、声、態度、どれをとっても不愉快だ。ヒナタ、行くぞ」

「な!? ちょっと待ちなさいよ! まだ、話は終わってないでしょ!」

 私の肩を抱いたまま、青木を置いて立ち去ろうとする。
 当然、彼女がそれを許すわけがない。
 わざわざ私達の進行方向に回り込んで、両手を広げた。
 この人、相当暇なんだなぁ。


 私は、そのウザさと執念深さに怒りを通り越して、呆れてしまった。
 しかし、エヴィエニスは違った。そんな青木の妨害行為にご立腹だった。

「2度は言わん。――失せろ」

 ギロリッと蒼く輝く相貌が青木を睨んだ。
 しかも、キュッと瞳孔が細くなる人間離れした芸当付だ。
 その視線の冷たさと鋭さに、私ですら背筋がゾッとした。
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