最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 ただ、窓だけが断続的に揺れている。気味が悪い。
 私はマンションの3階に部屋を借りているから、泥棒と変質者はありえない……ないと思いたい。
 実家を出る時に、何故か祖母ちゃんが持たせてくれた孫の手を念のため、装備しておく。
 抜き足差し足で、音を立て続ける窓に近づく。
 深呼吸をしてから、勢いよくカーテンを開けて、窓のロックを外し、バーンと窓を開け放つ。
 外の様子を見た私は、目の前の光景に絶句するしかなかった。


 巨大な影があった。
 いや、いたの方が文法的には合っているか。
 外の景色を完全に遮断する厳ついシルエット。
 その大きさに絶句しつつも、視線を徐々に上へと上げていく。
 すると、2つ並んだ青い炎を発見。目をゴシゴシと擦る。
 

 もう一度、視線を元の位置に戻し、次は下へ。
 狭いベランダの縁に、鋭く尖った自動車のタイヤほどはあろうかと言う鉤爪が1、2、3……10本。
 ちょうど、飼い犬がケージに前足を引っ掛けて立っているイメージだ。
 鉤爪が硬いコンクリートを線状に削ってしまっているのは、見なかったことにしよう。
 この既視感……この影の正体に見覚えがある。
 でも……まかさ。いや、そんな馬鹿な!
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