最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 人気のラノベみたいなお決まり展開にはさほど興味ないし、むしろ御免被る感じなんで! ゲームの世界へ。自分の持ち場へ帰って、どうぞ!
 私の切なる願いも虚しく、暗黒龍の鎌首がゆっくりと動き、硬直する私の前に向かってきた。
 鼻息が当たるくらいの距離まで近づいてくれば、否応無しに暗黒龍の顔が部屋の明かりに照らされ、その全貌が見えた。
 

 私よ。何故、窓を閉めなかった!
 恐怖で動くことも助けを呼ぶこともできない私の前で、暗黒龍がとうとう巨大な口を開いた。
 ズラリと並んだ牙は、どんな生物のものよりも大きくて鋭い。
 私は本能的にヤバい、食われる! と死を覚悟した。

『我を倒した最弱種族の雌よ! 名は確か……ソレイユであったな?』

 ゲーム同様、ドラゴンの声は、ゴガァアッと電車の走行音みたいな雑音が混じっている。
 絶望と言える威圧感を放つドラゴンの告白が、私の部屋全体を揺るがす。
 これは……もはや突風だ。部屋中の本や家具を突風が吹き飛ばす。
 もしかしなくても、これってマンション全体が揺れてるんじゃない?
 そんなことを悠長に考えている場合じゃない。
 質問に答えないとこのまま、食われるかもしれない。

「そ、そそそそうです。で、ででででも、ソレイユって言うのは、プレイヤーネームでして……」

 自分で言って、自分で笑えてしまうほど、声が震えている。
 それでも、答えられたのが奇跡だ。自分を褒めてやりたい。
 だが、

『なに? よく聞こえんぞ?』
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