最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
聞き取ってもらえなかったらしく、凄みの増した声で聞き返されてしまった。
大きな目玉がギョロリと動いて、そこに私が映りこむ。
「そうです! 私がソレイユです!」
こんなに腹から声を出したのは、何年振りだろう。
私の渾身の返答に暗黒龍は「うむ」と唸って、満足してくれた。
『そうか。では、ソレイユよ!』
風圧でコップや皿、窓ガラスが砕け散り、壁掛け時計やカレンダーが床に落ちる。
あっと言う間に部屋が嵐でも直撃したんじゃないかってくらいに、メチャクチャになった。
『我は、お前を娶りに来た! 今、この瞬間から我の妻――我の番になれッ!』
人間の私には、ドラゴンの告白は咆哮にしか聞こえなかった。
現実世界で咆哮の直撃を喰らった私は、眼鏡がすっ飛び、自分自身もすっ飛び、そのまま気絶した。
死ななかっただけ、御の字だと思う。あ、あれ? 私、死んでないよね?
てか、娶る? 妻? 番? えーっと、つまりドラゴンの嫁になれってことかい?
冗談はよしてくれ。やっぱり、これ夢だわ。
うん。夢なら安心して、意識を手放せるよ。