最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~


 結局、暗黒龍が窃盗してきた錦鯉は、私の手で近所にある公園の池にリリースされた。
 ヘトヘトになって帰ってきた私に、更なる追い討ちがかかる。

「7時を過ぎている……だと? ヤバい、会社に遅刻する」

 スマホの画面を二度見してからが早かった。
 帰ってきた私に話しかけようとするエヴィエニスさんの脇をすり抜けて、ハンガーにかけておいたスーツとシャツを掴んで洗面所に飛び込む。
 着替えを終えて、ベッド脇に置いてある仕事用のカバンを掴むと、玄関へ直行する。

「待て。今度は、何処へ行こうと言うのだ?」

「私は会社……えーっと、冒険者ギルドに行かなくてはならないんです! できるだけ早く帰ってきますので」

「……お、おい」

「ですから、そこで大人しくしていてください。誰かで訪ねて来ても決して、対応しないでください」

 私は靴を履きつつ、早口で捲くし立てる。
 エヴィエニスさんは、玄関先までついて来たが、動揺が隠し切れていない。
 ぼっちにされるのが不安なのか、視線が泳ぎっぱなしだ。
 おいおい、アンタは最強の龍王の一員だろう。
 ぼっち待機はお手の物なんじゃないの? しっかりしろよ。
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