最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「……我を置いて行く気か?」
ああ、そうだよ。だから、そんな情けない声出すな。
「お腹が空いたら、そこの冷蔵……じゃなくて、冷気を帯びた白い箱を開ければ、食料が入ってますから! じゃぁ!」
「……う、うむ」
エヴィエニスさんに口を挟む余地を一切、与えない。
七龍王を適当にあしらう。よくよく考えてみれば、ブレスで丸焼きにされたり、頭から食われてもおかしくない状況だった。
死の恐怖すら忘れるほど、私は焦っていたのだから、寛大な心で許して欲しい。
現実にドラゴン云々より、会社に遅刻せずに出勤する方が大事だ。
社畜とは、悲しい性を背負った生き物なのだ。
玄関に鍵をかけて、ちょうど3階で止まったエレベーターに乗る。
マンションを出ると猛ダッシュで、最寄りの駅へ向かう。
やっと駅が見えてきた頃、
「部屋にドラゴンを放置してきちゃったけど、大丈夫かな?」
と、無性に心配になった。
改札を抜けて、ホームで電車を待つ。