最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
一瞬で理解した。
ヤツは、私を見て笑っている。
獰猛な嘲笑に、悪寒が背筋を駆け上がる。
ずらりと並んだ牙は私の身長と差して変わらない。
身の程知らずの冒険者に敢えて見せ付け、恐怖を煽っているのだ。
『何かと思えば、最弱種族の雌か。ここは、お前のような者が入って良い場所ではない。即刻、立ち去るがいい』
暗黒龍の下顎が動くと、くぐもった唸り声と共に人語が漏れ出す。
七龍王は全ての生物、モンスターの頂点に立つ存在。
他のモンスターやダンジョンボスとは違い、言葉を解し、人と会話を成立させる。
そんな風の噂を耳にはしていたが、本当だったらしい。
私は背負っていた愛剣をスラリと抜いて、切っ先を暗黒龍に向ける。
「私は、お前を倒すためにここへ赴いた。暗黒龍よ、貴様との一騎打ちを所望する!」
『フハハハハッ、一騎打ちか! 面白い。その勝負、退屈凌ぎに受けて立とうではないか!』
と、挨拶代わりにと放たれる、闇黒龍の咆哮《ヴァインドボイス》。
命を懸けた戦いに、奇襲《アンブッシュ》、不意打ちは当たり前。
熟練者は、それを卑怯とは言わない。
そんな戯言を言ってるのは、初心なねんねの証拠でしかない。
しかし、その程度の脅しで一騎打ちから逃げ出す私ではない。
龍殺しと龍の戦いの火蓋が、静かに切って落とされた。