最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「ヒナタ?」
「そうです、日向です。名乗ってあげたんですから、ちゃんと覚えてください」
「ヒナタ……そうか。貴様の真名は、ヒナタと言うのか」
私の名前を何度も呟き、フッと目を細めた。
こいつ、微笑んでいる。この自称ドラゴン、私の名前を聞いて一人で喜んでいる。
覚えたての言葉を反芻して、聞き手に自慢する子供みたいだ。
それにしても、なんてニヒルで眩しいイケメンスマイルなんだ……。
でも、これね。イケメンだから許されてるけど、おっさんとか、キモオタとかが同じことしたら、即通報する。
ドラゴンと言い張る変質者の思考回路は、常識人の私には分からない。
「ぐぬぬ、話が先に進まない。その袋持って、こっち来て下さい」
「なんだ、ヒナタ。今度は何をするのだ?」
疲労で声に覇気がなくなった私とは逆に、エヴィエニスの声はウキウキしていた。
ヒールを脱いで、狭い廊下を歩く私の後ろをカルガモの雛みたいについて来る。
なんだろうなぁ、この複雑な気持ち。付き合ってる男女って、いつもこんな気分味わってるの? これって、楽しいの?
充実ってなんだけ? って、リア充がゲシュタルト崩壊起こしそうなんだけど。