最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 おっと、消費者目線の愚痴はこの辺にしておこう。
 これは緊急を要した妥当な出費だった。決して浪費ではない。
 新作ゲームが特典付きで3本買えちゃう値段だったなんて……。
 そもそも私は、赤の他人で、尚且つ変質者の男に、どうしてここまで親切にしているんだ?
 いくら首を捻っても、納得のいく答えは出なかった。

「ヒナタ、これで良いのか?」

 テーブルに両肘をついてブツブツと言い訳と愚痴を唱えていた背後で、洗面所のドアが開く音がした。さあ、渦中のご本人が満を持してのご登場だ。
 こちらの世界での初装備、スポーツウェアを着込んだエヴィエニスが出てくる。
 名前を教えてしまった手前、呼び捨てにされるのは百歩譲ろう。

「うわぁ……見事にパッツパツじゃん」

「……ぱつ?」

 無駄に発達し過ぎた筋肉のせいで、胸より上に上がってくれないファスナー。
 そこから見える黒のインナーには、ゆとりが一切ない。
 待て待て。布の上からでも、筋肉の凹凸が分かるって、どゆこと?
 ズボンなんて、7分丈になっちゃっているし。足長過ぎかよ。
 それでも様になっているのは何故なのか? 
 凡人とモデル体系の埋まらない格差を、私の目に焼き付けたいのか?
 あんぐりと口を開けて見上げていたが、ハッと我に返る。
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