最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
私はドラゴン殺しのシェナンテだ。
暗黒龍は、私との接戦の末、果てた。強者は私だ。暗黒龍すら適わなかった最強の騎士。
空飛ぶ大トカゲなんて、恐るるに足らず! と鼻で笑い飛ばすべきなのではないか。
「はは、下らない。我ながら、なんて滑稽で、愚かな撤退理由! これでは最弱種族と蔑まれるのも頷ける」
『……?』
エヴィエニスを前にして、演技めいた口調で喋り出す。
こうしてみれば、一生、役に立たないと思っていたゲーム脳と成りきりも侮れない。
ずり落ちた眼鏡を押し上げ、シェナンテがよくする胸を張り、両手を腰に当てた勝利のポーズを自分で再現する。
胸の大きさは控えめだが、威風と威勢は堂々だ。
「私はドラゴン殺しのシェナンテを操るプレイヤー、竜ヶ崎日向。暗黒龍なんて、恐怖の対象外です」
『ヒナタ?』
「直訳するなら、テメーなんざぁ、怖かねぇッ! って意味です」
『水を刺すようで悪いが、足の震えと顔色がこの上なく悪いぞ?』
「ただの武者震いだってばよ! エヴィエニスさん……舌噛みそうなので、以後はエヴィさんと呼ばせてもらいます。貴方を暗黒龍だと認めます。認めた上で、質問を続けます」