最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~


 私はドラゴン殺しのシェナンテだ。
 暗黒龍は、私との接戦の末、果てた。強者は私だ。暗黒龍すら適わなかった最強の騎士。
 空飛ぶ大トカゲなんて、恐るるに足らず! と鼻で笑い飛ばすべきなのではないか。

「はは、下らない。我ながら、なんて滑稽で、愚かな撤退理由! これでは最弱種族と蔑まれるのも頷ける」

『……?』

 エヴィエニスを前にして、演技めいた口調で喋り出す。
 こうしてみれば、一生、役に立たないと思っていたゲーム脳と成りきりも侮れない。
 ずり落ちた眼鏡を押し上げ、シェナンテがよくする胸を張り、両手を腰に当てた勝利のポーズを自分で再現する。
 胸の大きさは控えめだが、威風と威勢は堂々だ。

「私はドラゴン殺しのシェナンテを操るプレイヤー、竜ヶ崎日向。暗黒龍なんて、恐怖の対象外です」

『ヒナタ?』

「直訳するなら、テメーなんざぁ、怖かねぇッ! って意味です」

『水を刺すようで悪いが、足の震えと顔色がこの上なく悪いぞ?』

「ただの武者震いだってばよ! エヴィエニスさん……舌噛みそうなので、以後はエヴィさんと呼ばせてもらいます。貴方を暗黒龍だと認めます。認めた上で、質問を続けます」
< 59 / 146 >

この作品をシェア

pagetop