最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
お気に入りの芋ジャージに着替えた私は、キッチンでお湯を沸かしている。
点火したコンロに載せたヤカンがカタカタと軽快な音を奏でる。
もうすぐ湯が湧く合図だ。その音を聞きながら、そばに置いた2つカップ麺を手に取る。
包装を開けて、内容物のかやくを入れる。
エヴィさんは、シューシューと音を立て始めたヤカンを大きな身を屈めて、不思議そうに見ている。その瞳は、好奇心旺盛な子供みたいにキラキラしていた。
「小さな蒼い火が燃えているな」
「これはガスコンロって、言います。ここのマンション、古いんでIHじゃないんです」
火を止めて、ヤカンの取っ手に布巾を巻く。
ふたを半分だけ開けたカップ麺に湯を注ぐ。残った湯を不揃いなマグカップと湯飲みにも注ぐ。
揃いのカップなんて洒落た物は、ぼっちには必要ないからな。
先に入れておいたティーパックから滲み出た茶色が、じんわりと湯を染めていく。
カップ麺の匂いと紅茶の匂いが混ざって、キッチンが異様な香りに包まれる。
こんなのは日常茶飯事だ。気にする私ではない。