最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
麺を啜るエヴィエニスを残して、席を立つ。
立ってから、「おや?」と首を捻る。
私はどうして、このドラゴンに食べ物を無償提供してるのだろうか?
私だって、決して裕福ではない。むしろ、ゲームのために削るところは削る質素な生活を送っている。
インスタント食品だって安くはない。それを自ら与えている。
これは、ペットに餌をあげる感覚に一番近いかもしれない。
いやまさか、たかがカップ麺1つでこんなに喜ぶとは思わなかった。
輝くような屈託のない笑顔を見て、どうしたことか、私まで嬉しくなってしまった。
心臓と胃の中間辺りがじんわりと温かくなった気がしてならない。
理解不能な感情に、私の頭が考えることをやめている。
あり得ない、こんなの絶対おかしいぞ!?
やっぱり、彼は私の知ってる『煉獄の暗黒龍』と違う――。
収納棚から新たなカップ麺を取り出し、お湯を沸かす。
ぼーっともの思いにふけりながら、何気なく視線をリビングへ向けた。
そこでは、あーんと口を開いて、空になったカップ麺の容器を齧ろうとしているエヴィエニスが姿が……。