最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~


 結局、エヴィエニスはしょう油、塩、カレー、豚骨にうどんと、6つのカップ麺を容易に平らげた。今は7つ目のそばを実に美味そうに堪能している。
 私はその輝く笑顔をオカズに、はるさめヌードルをズルズル啜っている。
 カップ麺のストックがたった1時間足らずで尽きた。
 あれれ~? このはるさめヌードル、何味だったかな?
 もしかして、無味かな? と錯覚する程度に、心と感覚が打ちひしがれて死んでいる。
 恐るべき胃袋の持ち主。暗黒龍に「遠慮」の二文字はないのだ。

「ツガイとなる最弱種族のヒナタに、我が糧を与えられるとは……」

「昨今、男が女に養われるなんて、良くあることですよ。それ以前に、分からないコトが1つあるんですよ」

「わからんコトだと?」

「ツガイってトコです。なんで私なんですか? ゲームとは言え、私はエヴィさんを倒した憎むべき最弱種族ですよ? 同種のドラゴンとツガイになるべきなのでは?」

 行儀が悪いことは覚悟で、箸の先をビシッとエヴィエニスに向ける。
 これだけは、本当に謎なのだ。
 ゲームの裏ボスである暗黒龍が目の前に非現実的な状況は、もうこの際、目を瞑る。
 だが、自分を殺した相手……しかも、ゲームしか趣味が無いアラサー喪女にプロポーズするのはおかしい。
 同種のドラゴンと番うのが筋ではないだろうか?
 と言うか、私はまだ結婚する気がない。恋人を作って、セックスがしたいなんて欲求もほとんど皆無だ。ゲームができる人生が楽し過ぎて、生殖の本能を忘れている新人類とでも言おうか。
 もちろん、子供も欲しいとは思わない。しかもドラゴンとの子供なんて、もっと欲しくない。
 
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