最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 加減しているんだろうけど、最近コントローラーより重いものを持っていない私の力じゃ、彼の鋼の肉体はビクともしない。
 玄関に続く廊下の壁に押し付けられ、お互いの鼻先がくっ付きそうな距離で睨み合う。

「エヴィさん、顔が近過ぎです。パーソナルスペースを守ってください。それが人間のマナーですよ。あと、離してください」

「離して欲しくば、大人しく我を受け入れよ」

 これが壁ドン……うわー、どうしよう。全然キュンと来ない。
 シチュエーションが悪いのか? それとも、私の感性が一般的な女子と違う?
 エヴィエニスの目がマジだ。本物の殺気が滲み出ている。
 これ、告白じゃなくて、脅迫じゃね? 正直に言うと、小便チビりそうなくらい怖い。
 でも、怖いからってここで引いたら、相手の思う壺だ。私は、断固戦うぞ!

「今の私は、全くもって胸キュンしてないので無理です。はぁ……そうですねぇ。餞別に人間の雌を落とすためのヒントをあげましょう」

 今にも首筋に噛み付いてきそうなエヴィエニス。
 私は果敢にも、彼の前に指を3本立てた腕を突きつけた。

「人間の雌が魅力的だと思う男の条件。その1、自分の家を持っている!」

 そう言って、1本目の指を折り曲げる。

「その2。安定した職に就いていて、それなりの収入がある!」
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