月がみていて
第1章 <二日月>

<月>

脈が ズレる

音が響く

寒空の夜の中

私は 外で 弟とふたり

月を見上げては 抱き合った

怒鳴る声、壊れる音

―これが夢であればいいのに

そう思いたかったケド、

―これは現実

そう 受け止めていた(小1の冬)

ハァ、ハァ 吐く息は白く…

なのに、小さな体がふたつ

つらくて、熱くて、たまらなかった

<泣き声><割れる奇声>

―こんな夢はスリリング

そんな風には 思えなくて、

―こんな夜はリアル
居場所のない、この家での私達
涙が流れる弟の頬を拭う(ほほをぬぐう)

そして 枯れた自分の瞳に気付く

月の光りは見上げると

小さなふたりに温かい

「どう、なっちゃうの?」

4才の弟の声は かすかで細い糸のよう

「・・・。」

ギューっとただ抱きしめるだけ
< 1 / 233 >

この作品をシェア

pagetop