月がみていて

<愛情>

―まだ一緒に暮らしていた頃の、(母の口癖)は、

今でもハッキリ覚えている。

「親の反対を押し切って、

好きな人と一緒になったら、アカンよ。お母ちゃんみたいになるから…」


確かに(好き同士)だった筈なのに、アタシの思い出の中で、微笑む父と母は既に存在しなかった。

手と手を繋ぎ、ふたりで愛しあった・楽しかった時を過したはず・・・。


それから11年が過ぎて…幸せになれる筈だったのに。
ふたり、出会った頃のときめきなど、まるで忘れたみたい…素っ気なく、愛のかけらさえも、感じることができず…

そして、今から4年前、母は父を捨て、この家から出て行った。

きっと(今頃)…
せいせいシテル、に違いなく、アタシですら、そう想像できた。

それにしても、捨てられた父は、惨め…。

いまだに、母に捕らわれていて(女々)しくて、酔わずにはいられない程
娘のアタシは見ていられない程、情けない★・・・

(昔)の過ちを、幸せに変えられなかったどころか、(後悔)という(迷路)を今でもさ迷い続けているのだから…。

(自分自身)をコントロールできない大人なんて、反抗期の中学生より質が悪いと、アタシは情けなくなってしまった。


< 163 / 233 >

この作品をシェア

pagetop