月がみていて

<月の灯り>

古びた平家の一軒家

雑草が無造作で

手入れされていない家に

楽しい笑い声や会話

温かい料理と微笑みは、なく

― 数時間経った真夜中に

縁先きから家の中へと戻るのだ

泣き疲れ、床をはうようにお茶わんの

カケラを拾う母。

大の字で寝そべる高イビキの父。

そして、アタシは―弟を寝かせる

布団にこぼれた アタシの涙

やりきれない思いが染み込んだ

記憶の中の
母は傷の絶えない顔をしていた

なのに 家事をし、子供の世話をし―。

嫌なカオを見せず、とにかく一生懸命だった

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