ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
エピローグ
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
私と実松くんがチャペルで誓った二週間後のバレンタイン。
同窓会で訪れたブルーの絨毯が有名なホテルで宣誓したのは、平井さん。
まさかのスピード婚に、私も実松くんも、安藤さんも驚いた。
『授かり婚ですか?』
平井さんが二週間後に結婚すると言って招待状を渡された時、思わずお腹を見て聞いてしまった。
でも違った。
平井さんの結婚相手は中学時代から大学卒業まで付き合って、一度別れた相手だった。
「世界一周に行くようなタイプには見えないけどな」
紺色のダークスーツにグレーベストを組み合わせたコーディネートの実松くんが、少人数用の披露宴会場の上座に腰掛ける平井さんの旦那さんを見て呟いた。
「年上相手に失礼かもしれないけど、真面目で童顔な好青年にしか見えない」
「そうだな」
安藤さんも苦笑い。
それもそのはず。
平井さんから聞いたところによると、旦那さんは大学の卒業と同時に世界一周の旅に出てしまうようなアクティブな男性なのだ。
もっとも、結婚を視野に入れていた平井さんにしてみれば、そのアクティブさは要らなかった。
現に、平井さんは『待っていて欲しい』という旦那さんの申し出を断り、反動で生活力のある人と付き合うようになったのだから。
でも、半月前。
世界一周の旅を終え、世界を相手にする事業を成功させた彼が平井さんを迎えに来た。
『初恋を燻らせていたのは、私の方』
照れたようにはにかんだ平井さんからは、彼への愛が溢れていた。
私の恋愛話に興味を示し、どこか切なげに見えていた理由が分かった。
結果は違うけど。
旦那さんと顔を見合わせては微笑み合っている姿は本当に幸せそうだった。