ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「ほっぺた落ちそう」
口に入れた瞬間溶ける肉。
卵スープは優しい味。
初めての高級焼肉に感激だ。
頬に手を当てると実松くんは笑った。
「それだけ美味そうに食べてくれると払いがいがあるよ」
でもさすがにお腹がいっぱいになってきた。
「やっぱり頼み過ぎだよ」
ビビンバが届いたのを見て、口にする。
「まだ冷麺とデザートが届くんでしょ?」
料理を見ながら鳩尾辺りをさすると、実松くんはまた笑った。
「そんなこと言っても無駄。お前、典型的な痩せの大食いってやつだろ?会食とかでも、すげー食うもんな」
「残すのが嫌なだけ。食べた分だけしっかり肉になるよ」
特に夜遅くまで仕事していて、食事の時間や食生活が乱れてしまうと、すぐに下腹部にぷよぷよの肉が現れる。
今日も食事以外にビールを三杯も飲んでいるから、明日から節制しないと確実に太る。
「ならビビンバやめておく?俺が全部食べようか?」
上手におこげを作り、それからよくかき混ぜていた実松くんが、銀色のスプーンにビビンバを乗せ、私の目の前に差し出してきた。
キムチと少し焦げた味噌の匂いが鼻腔と胃を刺激する。
「食べる!食べますとも!いただきますっ!」
パクッとスプーンに食らいつくと、実松くんは盛大に笑った。
「自分の欲望に正直なところも俺は好きだよ」
このタイミングで好きとか……。
でもさっきの会話の続きはしないといけない。
デザートを食べ終えるまでの間、たわいない会話をしながら、答えを必死に考えた。