ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「ごちそうさまでした。本当に美味しかった」
店を出て、会計を終えた実松くんに礼を伝える。
「またいつでも連れてきてやるよ。恋人になってくれたら」
実松くんから話を振ってくれた。
横に並び、言葉の出だしを考える。
「好きな男」
「え?」
実松くんの低い声にドキッとした。
頭の中を読まれた気がしたからだ。
恐る恐る見上げ、様子を伺うと、同じ言葉を口にした。
「好きな男でもいるのか?」
「どうしてそう思ったの?」
質問に質問で返す。
そんな失礼な返答でも、実松くんはきちんと答えてくれた。
「俺に落ちない女っていないと思ってたから」
凄い自信。
でも、そういうことなら正直に言おう。
実松くんの言う通り。
「私には忘れられない人がいる」
10年前から心の中で燻り続けている想い。
彼は中学の同級生で、みんなが『千葉ちゃん』『千葉』と呼ぶ中で、初めて私を名前で呼んだ人物。
「意外?」
口を結んだ実松くんに聞くと、少しの間のあと、首を左右に振って見せた。
「ちなみに、その男とはどうなってるんだよ?」
「どうもなってないよ。でも再来週ね、会えるかもしれないの」
年末年始なら地元に帰って来る人が多いだろうと、成人式以来の同窓会が予定されている。
私は成人式後の同窓会にインフルエンザにかかってしまい、出席出来なかったから、同級生に会うのは10年振り。