ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「思い出は美化されるの。特に恋愛経験のない人には」
だとしたら私の気持ちは平井さんには分からない。
だって、平井さんは3ヶ月に一回のペースで彼氏が変わるくらい恋愛経験豊富な女性だから。
そろそろ今の彼とは別れて、別の男の人が仕事終わりに平井さんを迎えに来る頃だ。
それも前回の男性よりハイクラスの車に乗って。
「千葉さん?話し聞いてる?」
「あ、すみません」
平井さんのことに頭の中がシフトしていた。
謝ると平井さんは小さく首を振ってから、話を続けた。
「昔は昔。今は今。初恋の彼がどれだけ素敵に成長していたとしても、実松くんのように高学歴、高身長、高収入、イケメンっていう4拍子も揃う男と出会う確率は低いのよ?」
なにが不満なんだと言わんばかりの平井さんに逆に質問をする。
「平井さんは実松くんのこと好きですか?人間的にと言うんじゃなくて、オスとして」
「好きよ」
食い気味に即答されて、ハッとする。
「なんか、すみません」
平井さんは表情が乏しいから分かりにくかったけど、実松くんが私に好意を寄せている話なんて、気分がいいものではない。
平井さんが実松くんをどう思っているのか、先に確認しておくべきだった。
「本当にすみません」
「いいのよ、気にしないで。実松くんのことは好きだけど、実松くんが気に掛けてるのは千葉さんだって、ずっと前から気付いていたから」