ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
同窓会会場は某有名ホテルの本館二階。
ブルーの絨毯を敷き詰めた大階段が有名なホテルに合わせ、ネイビー色のセットアップパンツドレスを選び、髪はルーズなシニョンヘアにしてみた。
やり過ぎない程度のオシャレ。
でもいざ会場を前にすると高級感漂う空間と、久しぶりに会うことへの緊張で尻込みしてしまう。
10年前、私はみんなとどういう風に接していたのだろう。
同じ高校に進学した子もいる。
大学は、一人暮らしがしたくて家を出た。
『学費以外の生活費は自分で稼げ』
電車でも通える範囲内なのに、家を出たいと話した私に、親は言った。
これには反論することなく、私は大学に通いながらバイトに明け暮れた。
そうなると次第に、年末年始くらいしか実家に帰らなくなり、必然的に地元のことが分からなくなる。
友達も、東京の大学に進学した子と会う程度で、社会人になってからその数はさらに少なくなった。
もしかしたら、千葉恭子という名前はおろか、存在すら忘れられているかもしれない。
一抹の不安が胸をかすめる。
でも、そんな不安は一瞬で吹き飛んだ。