ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「二次会どうする?」
ひとり食事を堪能している私に、珠ちゃんが声を掛けてくれた。
「そろそろここはお開きで、カラオケに行くつもりだけど」
そこに行ってもきっと私は話についていけない。
流行りの歌も知らないし。
「ここで失礼するね」
そう言ってから、二次会に行く友達に声掛けて、一足先に会場を後にすることにした。
「はぁ」
別になにかを期待していたわけではない。
でも思い描いていた同窓会とは違っていて、足取りは重い。
クロークで受け取ったキャメル色のノーカラーコートを見て、またため息が出そうになる。
久しぶりの再会に期待と不安を抱きながら、少しは良く見られるために、ボーナスを使って新調したのに。
気合いは空回り。
せめて彼にだけでも見てもらいたかった。
お腹もいっぱいにならなかったし。
どこかで飲み直そう。
そう思って外に出た時、背後から声が掛かった。
「恭子!」
私の名前を呼ぶ声。
それは記憶にある声より低かった。
高鳴る鼓動を感じつつ、振り返ると、その先にいたのは長身の男性。
ショートカットの黒髪に、小顔。
奥二重の瞳に薄めの唇。
涼しげで、爽やかな雰囲気はそのままなのに、どこか色気漂う出で立ちに、胸がトクンと反応した。