ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「それより緑茶がいい?それとも紅茶にする?」
室内を見ていた視線を声の方へ向くと、実松くんはいつのまにかキッチンに立っていた。
「ごめん。私が余計なこと話したから。具合悪いんでしょ?お茶はいいから休んで。寝室どこ?」
キッチンカウンターに手を付かなければ体が支えられないほど、かったるい実松くんの体を支えるようにして寝室へと入る。
その部屋は白とグレーを基調としたシンプルな部屋だった。
「寒い?」
羽毛布団を掛けてもカタカタと体を震わす実松くんに聞くと、小さく頷いた。
「それならちょっと待ってて。温かい飲み物用意してあげる。キッチン、適当に使わせてもらうよ?」
また頷いたのを見て、キッチンへと戻り、ここへ来るまでに買って来た食材の中からレモンと蜂蜜を取り出し、それをお湯で溶いた。
「お待たせ。起きられる?」
ゆっくりと起き上がる実松くんの背中に手を回し、起き上がったところで背中にクッションを置いて体を支えた。
「ありがとう」
「ううん。それより飲んで。あったまるから」
コップを手渡した時に、偶然触れた実松くんの手は想像以上に熱かった。
「相当熱あるんじゃないの?」
反射的におでこに手を伸ばすとやっぱり熱い。
「測った?」
「1時間前で39度かな」
そんなに高いなんて。
でもきっとまだ上がる。
体が震えているのと、汗をかいていないのは熱が出切ってないからだ。
「インフルエンザとか?」
「いや。病院行って調べたら違うって。でも用意周到だな」
そう言うと実松くんはベッドサイドに立つ私の口元に手を伸ばした。
「マスクして来るとは思わなかった」
熱があるせいで笑顔が弱々しい。
それを見て、胸が締め付けられた。