ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「もし私が断ったらどうするの?帰りの車内が気まずくなるかも、とか思わない?」
答えを避けるように言うも、実松くんの態度は変わらない。
「断るつもりなのか?」
真剣な表情のまま、ただ私の答えを待っている。
答えを先延ばしにするのは、気持ちを伝えてくれた実松くんに対して悪い。
考えはまとまっていない。
でも、気持ちを言葉にしようと決意した。
「私は実松くんのこと、恋愛の対象として見てなかった」
「知ってる」
静かな合いの手に、ひとつ頷いて見せる。
「好きだって言われて、正直困った」
「好きな男が他にいたから、だよな?そいつのことがやっぱり好きか?」
この問いには首は動かさなかった。
志摩くんのことを好きだという気持ちはもう昔のものだから。
今、向き合うべきは実松くんだ。
「私、この前、実松くんの弱ってる姿見て、私に出来ることがあれば何でもしてあげたいと思った。それと今までは全然気にも留めなかったのに、今日は実松くんの元カノのことを考えた」
「元カノ?」
脈絡のない話に、実松くんの眉間にシワが寄った。
だから言う必要ないと思っていた、元カノの軌跡を話すと、実松くんは視線を下げた。
「悪い。そこまで気が回らなかった」
「一度来て楽しいと思ったからこそ、連れて来てくれたんでしょ?」
聞けば小さく頷いた。
「やっぱり」
それが分かるから余計にモヤモヤしてた。
そしてこの気持ちこそが答えだ。