ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「胸に耳当ててみ?」
実松くんに言われて、ゆっくりと耳を胸元に当てる。
「すごいドキドキしてる」
あまりの早い鼓動音に驚き、顔を上げると実松くんは真剣な顔で私を見下ろした。
「俺、動悸がするくらい嬉しいのは初めてだ」
「うん」
「不安ならなら不安がなくなるまでいくらでも好きだって伝える。必要なら今すぐ結婚したっていい」
「それはさすがに」
話が飛躍し過ぎ。
でも実松くんはその覚悟があると言い切った。
「俺はそのくらいお前が好きだ。重いか?」
揺れる瞳からは少し不安が見えた。
その不安こそが愛情に感じられた私は、ゆっくりと実松くんの胸に頬を寄せた。
「ううん。むしろ嬉しい。ありがとう」
「こちらこそ。ありがとう」
実松くんの囁き声は心から溢れるような声に聞こえて、胸がキュウっと締め付けられた。
「このまま家に連れて行きたい」
実松くんはそう言うと、私の体に回していた手を緩め、顔を覗き込んできた。
「ダメ?」
上目遣いに聞かれて、鼓動がドキドキと速まる。
「ダメ」
それだけ答えるのがやっとだった。
「自宅は他の女、上げたことないのにな。残念」
そう言いながらも、楽しそうな実松くんは、私の手を取り直し、駐車場へと進み、また私の知らない話をたくさんしてくれて、そのまま私のアパート前まで送り届けてくれた。