ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「今日は色々ありがとう。楽しかった」
シートベルトを外し、実松くんを見る。
「また連絡するね」
ドアノブに手を掛ける。
と同時に反対の手が掴まれた。
振り向き、実松くんを見れば、真剣な顔で私を見て言った。
「もう少し一緒にいたいって思うのは俺だけ?」
低く、甘い声に落ち着いていたはずの鼓動が急加速する。
でも、甘えることを知らない私は、なんて事ない風を装ってしまう。
「疲れたでしょ?いつでも会えるんだから」
「そうだけど……」
煮え切らない言葉を発した実松くんは、一度顔を逸らし、なにかを決意したかのように鋭い視線を寄越した。
それから私の顔へと伸ばされた手は、耳の後ろを触り、顔が近付いた。
「目、閉じて」
言われた意味は分かった。
でも経験がなくて、対応に困る。
日が暮れた夕方とはいえ、人通りがないわけではないし。
「ここではちょっと」
「なら、家に来る?」
甘い囁く声に限界がきた。
顔を背ける。
でも、無理に正面を向かされ、ゆっくりと、静かに唇に柔らかな感触が伝わった。