ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「ちゃんと目、閉じられるじゃん」
言われて、目を反射的に閉じていたことに気付いた。
でも、それを実松くんが知っているということは、実松くんは目を閉じなかったということなのだろうか。
目は閉じるものじゃないの?
「どうした?」
初めてのキスよりも、キス自体のやり方に混乱している私を実松くんが心配そうに見ている。
「嫌だった?」
余計な不安を与えてしまったようだ。
「ううん。嫌じゃなかった。でも、経験がないから、これからも面倒掛けちゃうかもしれない」
「そんなの気にすんな。千葉の一番になれて光栄だよ」
くしゃくしゃっと髪を撫でられて、また軽く唇にキスされた。
ゆっくり目を開ければ、まだ至近距離に実松くんがいた。
「な、なに?」
「夢みたいだな、と思ってただけ。千葉は手に入らないって思ってたから」
低く静かな声と近くで見つめ合う、実松くんの熱を帯びた視線に、ドキドキする。
今更ながら、恋人になったんだって実感が湧いてきた。
「ごめん。もういっぱい、いっぱい」
これ以上、甘い雰囲気を作られたら心臓が持ちそうにない。
お手上げ、と言わんばかりに両手を挙げると、実松くんは小さく笑った。
「また今度な。今日はゆっくり休んで」
「うん。本当に色々ありがとうね。じゃ、また」
恥ずかしさを隠すように、そそくさと車を降りる。
車が見えなくなるまで見送った、その後もまだ胸はドキドキしていた。