ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「どうした?」
仕事終わりに実松くんと待ち合わせた。
駅前で、ニヤニヤしている私を実松くんは怪訝な顔をして見てくる。
「俺に会えるのが嬉しい、って顔じゃないよな?それ」
さすが、付き合いがそれなりに長いだけのことはある。
頷き、実松くんを見上げると、険しい顔で私を見た。
「そこは嘘でも否定しろ」
そこまで言うと、実松くんは私の頭に触れ、髪をクシャクシャっと乱暴に撫でた。
「それで?なにか良いことでもあったのか?」
隣を歩く実松くんが話を振ってきた。
「指名で建築依頼が入ったの」
「それはすごいな。やったな!」
自分のことのように喜んでくれる実松くん。
それがすごく嬉しくて、気持ちを笑顔に乗せると、実松くんは公衆の面前であるにもかかわらず、私を抱き寄せた。
「わ!ちょっと、なにしてんの?!」
背中を叩き、離してもらうよう態度で示せば、実松くんは体を離し、照れたように微笑んだ。
「悪い。あまりに可愛かったんで、つい」
「意外」
実松くんは頭で考えてから行動に移すタイプだと思っていた。
それなのに感情的に動くなんて。
知らない実松くんに出会った気がして興味を惹かれる。
「そんなに見るなよ」
「あ、ごめん」
凝視し過ぎてしまった。
反省し、実松くんの隣に並び、予約している焼き鳥屋へと向かう。
それなのに、実松くんは反対方向へと向いた。