ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
笑われている?!
その事実を目の当たりにしたら、無性に恥ずかしくて腕を解く。
でもその手はすぐに取られた。
「離して」
「なんで?嬉しかったのに」
「笑ってたくせに」
見え透いた嘘はつかないで欲しい。
ポツリと呟くと、実松くんは笑って首を振った。
「笑ってない。可愛い過ぎて、困ってただけだ」
そう言うと実松くんは繋がれた手に視線を下ろし、指を絡めた。
いわゆる恋人繋ぎという手の繋ぎ方に、ドキドキして、手汗をかきそう。
絡められた手から視線を上げる。
すると、実松くんと視線が交わり、思わず互いに俯いた。
「ハハ。全く、いい歳して、手繋ぐだけで照れるとか、変だな」
「私に経験値が足りないからだよ。ごめん。慣れるように努力する」
「気にするなって。本気で好きな女を前にしたら経験値なんて何の役にも立たないんだから。でも、そうだな」
話の途中でなにかを思い付いた実松くんは行き先を変えた。
「ちょっと、どこ行くの?」
逆側に引かれて、腰が引ける。
見兼ねて実松くんが腰に手を添えた。
「な、なに?!」
恥ずかしくて、くすぐったくて、歩みを止める。
でも、実松くんは足を止めない。