ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「やっぱり今日は家に連れて行く。そうでないと」
「そうでないと?」
復唱すると、実松くんは身を屈め、耳元で囁いた。
「店の中でキスして押し倒しちゃいそう」
「それは困る!」
でも、実松くんの家なら良いというわけでもない。
甘く囁かれただけで、耳は熱を帯び、熱く、全身が脈打つようにドキドキしてしまうのだ。
これ以上のことが起きたら、私は正気を保っていられないだろう。
とはいえ、恋人なのだからキスやそれ以上のことはして当たり前だということも分かる。
ただ、心の準備が間に合っていない。
でも…でも…
答えの出ない迷路に迷い込んだまま、実松くんは駅地下の食品売り場へと進んで行った。